生産年齢人口(15〜64歳)の減少により人材不足が加速している昨今、日本で活躍する外国人材の受け入れに関心が高まっています。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、令和5年10月末時点における外国人労働者数は204万8675人となっており、届出が義務化された平成19年以降で過去最多となりました。産業別にみると、製造業に従事している外国人労働者が最も多く、全体の27%を占めています。
外国人材の雇用は人手不足の改善のみならず、日本経済の活性化や国際化にもつながると期待されています。外国人の受け入れに伴う課題を解消し、外国人材が長期にわたってより一層活躍できる社会を実現するため、令和6年6月21日に新たな雇用制度「育成就労」の創設に関連する改正法が公布されました。
現行の外国人雇用に関する制度には「技能実習制度」と「特定技能制度」があり、この2つは目的や要件などが異なっています。今回の法改正は、技能実習制度の抜本的な見直しを行うことによって特定技能制度へ連続性を持たせることを目指したものです。
現在施行されている技能実習制度と特定技能制度の概要や相違点は、次の通りです。
平成5年に創設された技能実習制度の目的は、人材育成を通じた国際貢献です。日本が培った知識や技術などを「人づくり」によって移転することで、開発途上国などの経済発展に協力しています。
技能実習では、外国人が日本の企業や個人事業主と雇用関係を結び、母国での修得が困難な技能などを学びます。技能実習計画に基づいて行われ、実習期間は最長5年です。
技能実習制度には3区分が設けられており、第1号から開始となります。
●第1号技能実習:入国後1年目の技能などを修得する活動
●第2号技能実習:入国後2・3年目の技能などを習熟する活動
●第3号技能実習:入国後4・5年目の技能などを熟達する活動
第1号技能実習として入国後は、原則2ヵ月の講習を受けます。講習では日本のルールや日本語を学びますが、初めて日本に来る外国人が多いため、技能実習生の日本語能力は低い(日本語能力試験N5程度)傾向にあります。
第1号の職種・作業は、原則として制限がありません。ただ、第2号や第3号への移行はそれぞれ職種・作業に制限があります。
移行の際は職種・作業の変更はできないため、移行対象に当てはまらない技能実習生は1年の実習を終えると帰国することになります。移行対象の技能実習生は、所定の試験に合格することで第2号や第3号への移行が可能です。
技能実習制度を利用する企業のメリットは、一定期間の安定した雇用を見込める点です。技能実習制度を活用できる職種は幅広いので、環境などの要件を満たすことができれば大半の企業や個人事業主が技能実習生を受け入れることができます。国内の求人は難しい産業分野であっても、他国では技能実習を希望する候補生が多いため、企業の条件に合う人材と原則3~5年間の雇用関係が結べます。
また、技能実習生が従業員に加わることで、職場の活性化が期待できます。技術習得を目指した技能実習生は労働意識が高いため、指導を行なったりコミュニケーションを取ったりする中で他の従業員にもいい影響が出てきます。
一方で、技能実習制度を利用した現場では様々な問題が発生しています。不適切な賃金の支払いや指導方法、長時間労働などといった実習実施者による違反行為が見られ、技能実習生の犯罪や失踪などが起こっています。こうした問題を食い止め、適切な技能実習の実施と技能実習生の保護を行なうことが喫緊の課題です。
特定技能は平成30年に創設された制度で、国内人材の確保を目的としています。生産性向上や人材確保の取り組みを行なった上でも依然として人材不足に陥っている分野に限り、一定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れることができます。
在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、在留期間や条件などが異なります。特定技能1号は特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格とされ、特定産業分野は下記の16分野が該当します。
●介護
●ビルクリーニング
●工業製品製造業
●建設
●造船・舶用工業
●自動車整備
●航空
●宿泊
●自動車運送業
●鉄道
●農業
●漁業
●飲食料品製造業
●外食業
●林業
●木材産業
上記の分野に従事する特定技能1号は、更新を行なうことで通算5年まで在留が認められます。家族の帯同は、原則として認められません。
特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。特定技能2号の分野は、特定技能1号の16分野から介護・自動車運送業・鉄道・林業・木材産業を除いた、下記の11分野となっています。
●ビルクリーニング
●工業製品製造業
●建設
●造船・舶用工業
●自動車整備
●航空
●宿泊
●農業
●漁業
●飲食料品製造業
●外食業
3年、1年または6か月ごとの更新によって上限なく在留することができ、要件を満たせば配偶者や子どもの帯同も可能です。
特定技能は、技能実習を修了後に移行することができます。ただし、特定技能の特定産業分野と対応していない技能実習生は、特定技能に移行することはできません。基本的には試験に合格することで移行可能となりますが、技能実習2号から特定技能1号への移行は良好修了者と認められれば試験免除となります。
特定技能制度の活用における一番のメリットとしては、即戦力となる人材の獲得が挙げられます。国内人材で補い切れない労働力不足に陥っている企業にとって、特定技能制度で受け入れる外国人材は救いの一手となるでしょう。
また、グローバルに展開する企業であれば、外国人材がメンバーに加わることで海外企業とのつながりを深められる可能性があります。他国の文化や状況などといった情報を交換したり、新たな人脈づくりのきっかけになったりすることで、国際的なビジネスチャンスを得られるかもしれません。
技能実習制度は国際貢献、特定技能制度は人材確保を目的とした制度なので、双方は受け入れる人材に違いがあります。
技能実習は技術や知識などを学ぶ未経験者が対象となるのに対し、特定技能は一定の知識や経験を持つ人材が対象です。技能実習生の技能や日本語能力などは低い水準から受け入れ開始となりますが、特定技能の外国人材は受け入れ時から高い技能を持ち、日本語のコミュニケーションも問題なく行なえるので、企業にとって即戦力となります。
技能実習は、基本的に3〜5年程度の期間を同じ企業や個人事業主のもとで行ないます。一方、特定技能の場合は要件を満たせば転職が可能で、退職・帰国などの離職といった面で技能実習生より自由が利きます。
受け入れ可能な職種・作業については、技能実習制度の方は間口が広くなっています。特定技能1号は16分野に限定されるのに対し、技能実習1号には原則制限がありません。
こうした違いから、技能実習制度は一定期間の定着が見込める点、特定技能は即戦力となる人材確保ができる点が特長といえます。
日本の労働市場における慢性的な人手不足が深刻化する中、国際的にも人材獲得競争が激しさを増しています。外国人材の獲得は、日本の労働力確保に欠かせない対策のひとつです。
現行の技能実習制度は人材育成で国際貢献を行うことを目的としていますが、目的と実態に乖離が生じている点や外国人の権利保護などといった面で、多くの課題が指摘されています。そこで、外国人に魅力ある制度を新たに立ち上げることによって日本が外国人から「選ばれる国」となり、日本経済を支える人材の適切な確保に乗り出しました。
新しく創設される「育成就労制度」は、日本の人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする制度です。現時点では施行日が未定となっていますが、改正法の公布日である令和6年6月21日から3年以内に施行されます。これに伴い、技能実習制度は改正法の施行日で技能実習計画の認定申請が打ち切られるので、2027年(令和9年)までに廃止となります。
育成就労制度になることによって、外国人を受け入れる手続きなどの基本的な流れは変わりませんが、受け入れる企業や個人事業主(育成就労実施者)の要件は新設や廃止、変更が加えられる予定です。
また、育成就労制度の創設時には特定技能制度の改正も行われます。育成就労制度と特定技能制度の間にスムーズなつながりを持たせることによって、外国人が日本での就労を通じてキャリアアップできる体制を整えます。長期的に日本産業を支える人材の確保を目指した改正です。
3月14日(金)10:30~12:00
開催方法:オンライン/Zoom(事前申込)
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